第2話 目覚めは🐒
何もない荒地を、俺はただ漫然と一人歩いていた。
理由は分からない。ただ気が付いたら、空が血のように赫く、地面はバチバチと音を立てて燃え盛る火花が咲いているこの場所にいただけだ。
ああ、ここは地獄だな……。
ただ、まるで夢の中にいるように、思考は上手く回らず、身体は思うように動かせないが、それだけは何となく分かる。
その時、何の予兆もなく、目の前に真っ黒な人影が現れた。
「……アンタが、地獄の使者ってヤツかい? ツノは無いんだなぁ」
黒い人影は肩をすくめると、真っ直ぐこちらに歩いてくる。
俺は咄嗟に臨戦態勢に入るが、影の野郎はそんなのお構いなしだ。
……どうしよう。このまま大人しく噂の閻魔様とやらの所まで連れてかれた方が、まだ罪は軽くなるか?
地獄まで来て、そんな往生際の悪いことを考えている自分に笑ってしまう。
どう足掻こうが、どうせ俺の逝き先は決まっているのだ。
なら、最後まで自分らしく行こうじゃねえか。
「やいやいやい! この俺を誰だと思っていやがる! 天の光だろうが欲しいものがありゃ、何でも盗んできた! 相手が天下人だろうが関係ねえ! 気に入らねえ奴から盗んで盗んでばら撒く、天下無双の大義賊! 石川盗夜様だぞ! そんじゃそこらの三文泥棒みてえに大人しく手前に連れて行かれると思ったら大間違いだ! 俺を捕まえたかったら、万の軍勢を用意しな!」
俺がそう啖呵を切ると、いつの間にか目の前には視界を埋め尽くさんとする大量の黒い人影で溢れていた。
「うわぁぁああああああああああっ⁉︎」
「うきゃぁぁあああああああああっ⁉︎」
「……はい?」
目が覚めると、そこは道場のように広い建物の中で、俺の隣には耳を押さえながら暴れ回ってる女がいた。
「わ、私の耳がぁ! 昔突然耳元で猿に叫ばれた時並みに痛い!」
「おい、誰が猿だ」
てか、コイツ誰?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます