パンツを盗まないと英雄になれない?ちょっと詳しく説明してもらっていいですか?

はるかうみ

第1話 地獄の大釜

 バチバチッと大量の薪が大きな音を立てながら燃え盛る。

 薪の数に比例した灼熱の猛火は、大人が何十人入っても余裕がありそうな、天下の大釜を真っ赤になるまで熱している。

 俺は、大釜の中でボコボコと煮たつ油を見下ろしながら、ただただ安堵する。

 コイツなら、俺の罪をこの世で綺麗さっぱり浄化してくれそうだ。

 あの世では、天国でゆっくりと過ごすとしよう。


「お、お頭! お願いです! どうか……どうかっ、俺たちのために死なないでください‼︎」

「お頭なら今からでも逃げられるはずです! 私たちに構わず、お願いですから生きて……!」

「うるせえ、俺はお前らのお守りにはもう疲れたんだ。悪いが、先に逝くぜ」


 後ろで童みてえにべそをかいている子分達に笑って、俺は死刑台から飛び降りる。

 スローモーションのように流れていく景色の中、目の前には大勢たちの役人が大笑しながら酒を飲んでいる。

 自分たちの財宝を盗んだ俺が死ぬのが、よっぽど嬉しいらしい。


 はんっ、今は精々勝った気でいればいいさ。

 小悪党の俺一人を始末したところで、時代の流れは変わらねえ。

 きっと、俺の後継者となる奴が、これからごまんと現れて、いつかその肥えきった贅肉ごと、お前らの首が無くなる日がくる。


「あばよ、子分ども! これからは、テメエらの時代だ! あの世にまで轟くほど、派手に暴れやがれ!」


 こうして、俺の……石川盗夜の人生は、幕を下ろした。

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