第14話 藍の魔砲使い

 昔というより前世、超常の力と言えば魔術を指す時代、魔夜は魔法使いと呼ばれていた。魔術師にとって奥義とも呼べる魔法。通常は長い時間をかけ、世代を超えやっと形になるそれを一人で創ってしまったからだ。魔夜が好戦的でなくてよかった。それほどまでにその才能は恐ろしかった。ただ、同じ時代に”まほうつかい”と呼ばれた人間はもう一人いた。藍の魔砲使い_藍花 憶人、そう俺だ。







魔弾バレット


 白夜さんの異能がわからない今、むやみに突っ込むのは自殺行為だ。とりあえず適当に弾幕で牽制する。切るか躱すか、白夜さんがどう行動しても対処できるよう足は肩幅に開いておく。縮まる魔弾バレットと白夜さんとの距離。そしてそのまま、着弾する。最後まで白夜さんは棒立ちだった。立ち込める砂埃。着弾の余波ではねた小石が頬をかすめ、薄皮が切れる。視界が晴れるのを待っていると、


「憶人、跳べ!!」


 先輩の声、反射的に跳んだ。突如砂埃は晴れ、剣戟が飛来する。


「まさか刀を振るだけでこんな芸当できるなんて」


 とはいえ能力はまだ謎に包まれている。棒立ちの状態で魔弾を防げ、剣戟に形を与える異能。異能は一人一つ、どんな複雑そうな異能でも一言で説明ができる。それは絶対のルールだ。俺も先輩も例外ではない。なら白夜さんだってそのはずなんだ。


「考え事か。」


 魔と鼻の先に白い髪が映る。引いても切られる。防げるかは危うい。せめて一撃浴びせる。


バレッ/


 鞘の中を刀身が駆け、火花が散る。冷たい刃が俺を切り裂く。


仮人迫ヒトデナシバ/


 返しの一太刀でまたもや致命傷を負う。白夜さんの間合いで戦えば勝機は無い。ならば、銃撃戦に持ち込む得意を押し付けるのみ。


仮人迫命ヒトデナシバグ


 再び異能を発動。背後をとり、白夜さんの全体を視界に収める。距離は確保した。この隙に魔法を展開する。前回の反省を生かして、印は手袋に仕込んでおいた。右手を地面に着き、左手は魔眼に、


魔法コード人外喰らいヒトデナシクライ発動エンチャント


 範囲、効果時間を犠牲に発動を簡略化。速攻で片づける。その場で抜刀術の構えをする白夜さんに向かって地を蹴る。強化ブースト八重掛けオクテッドで身体強化した俺は、文字通り風を切って進む。その間も白夜さんの一挙手一投足見逃さない。


「北上流抜刀術 十六夜」


 俺は衝突するつもりで強化を四肢、特に脚に集中させていた。それでも衝撃が襲わないどころか、すれちがっていた。俺の四肢が視界に映る。異能なし、何ならオーラも使えない素の身体能力でこれだ。もう、諦めてもいいんじゃないか?今から誤れば許してるれるんじゃないか?これは俺から吹っかけた喧嘩だ。だったら・・・・・・。そう諦める理由を探していると声が鼓膜を揺らす。


「憶人!勝って!!」


「魔夜・・・。」


 ダメだ。どんな無様でも勝たなきゃいけない。ベストを目指さなきゃいけない。妥協したから失った。死んだ。独りにした。俺が変わらなきゃ、きっとまた繰り返す。魔眼だけじゃ足りない。このままじゃ足りない。あれは魔夜が弱者のために作ったやつだから。こうなったら、まだ完成はしてないけど俺の切り札とっておき


「無駄だ。同じ手はくわん。」


 構えは同じだからな。そうも思うか。


No.8コード オクテッド魔銃庫パンドラ


 俺の右手にはアタッシュケース。勿論、ただの箱じゃない。まるで生きてるかのようにひとりでに開き魔法陣を8つ展開、ガトリングの要領で魔弾バレット八重掛けオクテッドを連射する。魔弾の色は藍。


「白夜さん、あんたも刀を使ってるんだ。卑怯だとは言わないよな。」


 白夜さんは飛来する魔弾を全部その身で受け、それと同時に後方で爆発が起こる。ただ、その爆風が来るのが遅かった。なるほど、異能か。


「白夜さん、あなたの異能がわかりましたよ。」


 ただ、これがほんとなら、チートが過ぎるだろ。そう心で悪づいて、外れてくれという淡い期待を胸に言う。


「あなたの異能は、マンガやアニメで言うエフェクトを生成。それとエネルギーのやり取りができる。そして、エフェクトの維持にオーラを使う。違いますか?」


 下げていた刀を再び構える白夜さん。


「正解だ。」


 なら、俺の戦い方は決まった。華が無い泥試合。はあ、


「どっちが先にくたばるか、根競べといきましょう。」


 そっからは会話はなかった。いや、戦いの速度が音速を越えていた。白夜さんが何か言ってるるのは口の動きでわかったが、俺は読唇術なんて使えない。ただ、勝つことだけを考えてNo.8コード オクテッド魔銃庫パンドラをマグナム、二丁拳銃、サブマシンガン、ショットガン、アタッシュケースと変形させ、先制、追撃、牽制、応戦、防御と凌ぎながらも着実に異能を使わせた。それに対して白夜さんも弾幕の嵐の中、異能を使う時間を最短にするためにどの弾を受け、どの弾をはじくのかを一瞬で判断し、一振りで何発もの魔弾バレットを叩き切る。そして、俺の近くで異能が爆ぜる。押し負けるわけにはいかない。すかさず、魔眼で弾数を増やして抵抗する。


複製ブーケ


 もしも、これを重ね掛けしたらどうなるか?複製に対して複製を使えばどうなるか?可能だ。威力も下がらない。だだ、眼が疲れるからしないだけだ。もっとも、


魔弾バレット螺旋弾スパイラル壊砲フルバースト


 決め弾に対しては別だ。

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