第11話 火のない所に煙は立たぬ side朱兎
APFに行って一週間、鏡子姉の提言もあり、憶人は一人でのパトロールを許可され、町を巡回している。たまに喧嘩を吹っかけてくるヤツもいるが全員返り討ちにできるだろう。あれでも
「憶人、今日もパトロールさぼるなよ。」
「魔夜じゃあるまいし。そう言う先輩もお仕事頑張ってくださいね。」
と後輩に見送られ任務に向かう。正直憂鬱だ。なんせ、瞳のヤツ提案の潜入任務だからな。それに、おれは政府能力者ランキング(全員が登録されてるわけではないだろうが)でTOP10入りしてて顔がわれてる。だから、変装は必須なわけで。
「ちっ、もう追いついてきやがった。」
空から凄い速度、そして気迫で迫ってくる服。いや、見覚えがある。三年前、その服をおれは毎日見ていた。
「鏡子姉のお古なんか着られるか!!」
おれは政府から制限されている出力の内で最速で逃げる。上へ上へと、雲を突っ切ったところで
「グフォア。」
空中で縛られるおれ、破かれる服、って下着まではさすがに、、、、、、。ってうわあああああ。やられた。もう諦めるしかない。ツクモンが糸にまでばらけ、おれにまとわりつき、再び服の形となる。
「ううう、お婿にいけないよ~。」
ただ着古した服を破かれただけだというのに、何か男として大切なものを失った気がした。しかし、おれはプロだ。任務は失敗できない。
「うう~、頑張るしかねえか。」
異能を解除し重力に従って落ちる。雲を抜け、濡れた髪をかき上げ、目的地を視界にとらえ、空を蹴る。
たどり着くと。近づいて改めて見上げるとデカデカAFP本部の文字。深呼吸をして自動ドアをくぐる。
「あの~、見学をしたいのですが、よろしいですか?」
耐えろ。これは任務だ。おれはかわいくない。途中でメイク一式のツクモンに顔をやられたが、おれの漢気は残ってる。任務を優先するなら気づかれないように祈るべきだけど、気づけ、女装に気づけ。
「カワイイお嬢さんですね。わかりました。これにご記入の後、もう一度私に声をかけてくださいね。」
受付のお姉さんに気づいてもらえなかった。絶望に足がふらつくのを耐え、中央の螺旋階段に向かう。目的は地下。立ち入り禁止の看板があるが、政府の重要組織に監視カメラは無い。瞳のヤツがいて、ハッキングされるリスクも考えるとその方が安全だからな。だから、おれは堂々と乗り越える、人に怪しまれないように堂々と。そして下へ下へと階段を下りる。螺旋を二周ほどしてロビーが見えなくなって歩くのも面倒になってきたので異能を使う。
「
憶人のヤツは勘違いしているがおれの異能は重力を操作しているのではなく足場との距離の変化を調整している。ま、それだけじゃないんだけどな。階段中央を足場に指定、距離は段差分を補正して均す。そうして重力に引っ張られて下へ下へ
「ふ~、快適快適。」
滑り台のように、下へ下へ。にしても長くないかこれ?まあ、瞳のヤツの情報だと地下100mだからな。って速度を上げ過ぎたな。っと、階段も終わりか。視界が開け、謎の広い空間。目の前に扉が広がって!?
「っま、おれの最高速度は音速越えだから、こんぐらい大したことないけどな。」
扉にオーラで強化した足を向け、サマーソルトの要領で宙返り、勢いを殺す。広い空間に響く重低音。この扉の厚さがわかる。
「っま、今からこれをぶっ壊して撤退しますか。」
おれには政府に隠している能力が二つある。一つは連続して0.1秒しか維持できないが透明で破壊不可の足場を足裏の空間に設置する能力。そしてこれは憶人との戦闘でも使ったが、足場指定した物体を破壊する能力。オーラの消費量は体積と比例するから薄っぺらい方が嬉しいんだけどな。
「グダグダ言っててもしゃあない。さっさと終わらせて帰るか。」
カッ、足裏を扉に押し当て、
「
ははっ、フラフラだな。オーラを使い過ぎてくらくらする。正直、帰れるか危ういほどだな。、、、、、、が、任務は遂行する。きれいさっぱりなくなった扉を通り過ぎ部屋へ入る。するとそこには、
「・・・・・・お・く・と。」
脳の処理が追い付かない。緑色の液、憶人そっくりの人間、それらが詰められた大量のポッド。どういうことだよ。
「おいおい、おれはSFあんま読まねえんだぞ。」
とにかく、写真撮って資料回収して帰ろう。あとは瞳のヤツが
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