第4話 大舞踏壊 破

仮人迫命ヒトデナシバグ


 僕は異能を発動する。まぁ、緊急退避用の異能だ。まぁ、なるべく使いたくなかった。だって、僕はオーラの量が少ない。


「や~っと、異能使ったな。お前を倒すには異能を使えなくしないといけないからな。まっ、じっちゃんに異能は使うなよって言われてたけど、”こちらも抜かねば無作法というもの”ってヤツだ。」


 朱兎先輩は白夜さんをじっちゃん呼びして慕っている。だから、戦い方も口癖も似せている節がある。先輩は刀なんて使わないのにな。なら、ちゃんと言いつけ通り異能を使わないでほしかった。


大舞踏壊ブレーキングダウンダンスホール


 だって、先輩の異能は強すぎるから。先輩曰く『”足場”を指定する。そして”ぶっ壊す”。俺の異能はお前のほど複雑じゃねえよ。』だそうだ。”足場”の指定が一番厄介だ。平面を対象にし発動する。"足場”指定を受けると。


「その障壁、強度は十分かぁ?」


「ぐっ。」


 僕の体にもの凄いGがかかる。肺から空気が押し出される。障壁は俺の踏み込みで限界寸前。あと少しでも衝撃を与えれば割れてしまう。風を切る音がする。障壁が割れる。それでも”足場”の指定は切れない。上空に落ちていく僕。どのくらいの距離を飛ばされたか。G が正常に戻る。障壁を割る前に異能を使っていたらこうはなっていなかったけど、


「こっから魔術使った方がコスパがいいんだよな。」


 先輩との距離は目測で約600mかあ。そしての下には住宅街。住民に迷惑をかけない範囲ならこれが最適解か。


魔弾バレット狙撃スナイプ七重掛けセプテット・・・」


 念のため目と脳に強化をして、ありったけの魔力を方陣に流し込む。


壊砲フルバースト!!」


 ちょっと、やり過ぎたか?まぁ、先輩なら余裕だろ。悔しいけど。


「っと、帰りの魔力残ってるかな。」


 ギリ足りるか。障壁と強化でひとっ飛び。吹っ飛ばされた時と同じかそれ以上の速度で庭の方へと跳躍。先輩の背後に着地する。


「ふー、帰って来たぜ先ぱっ。」


 背中に衝撃が走る。着地狩りはなしでしょうよ。先輩が最初にぶつかった塀。その破片に能力を使用。反対側の塀を”足場”に指定したんだろう。


「トラップも警戒しなきゃダメだろう。」


「ふーっ。」


 喰らうう瞬間に魔術で肉体を強化したっていうのにこの痛さ。先輩がオーラで破片の硬度を強化したと考えるのが妥当か。ただの飛び道具でこの威力。避けるか障壁で防ぐかしないといけない。だけど、一番の脅威は先輩本人との格闘戦。とんだ無理ゲーじゃないか。


「最初の威勢はどうしたんだ。やっぱり、おれには勝てないか。まっ、これに懲りたらバカにするのをやめろよな。そしたら訓練手伝ってやるから。」


 何言ってるんだ?まだ、試験中だろ?


「ああ~、ハッキリ言った方がいいか。合格だよ。合格。」


「えっ。」


 心の底からの『えっ。』だった。だって、僕は今、劣勢じゃないか。それに、俺はまだ全部を出し切っていない。それなのに合格、はいお終い?納得できるか。


「まだですよ、勝ち逃げは許しません。」


 先輩はやれやれといったポーズをとり。視線は僕、、、、、、よりも少し上に向けて言う。


「憶人がこう言ってるけど。どうする、じっちゃん。」

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