第2話 魔法の習得と本当の話

  俺は魔術本を持って森に来ていた。

  そしてノルンと絶賛魔法の練習中だ。


  母さんにこの事を話したら、息子に初めて友達ができた‼︎と言って、はしゃぎまくっていた。

  そして、ちゃっかり二人分の弁当を作っていた。

 

「もう少し、イメージを強くした方がいいかな。」

「強く……」


 ノルンはまず風魔法〈ウィンド〉の習得を目指した。

 〈ウィンド〉はその名の通り、風を起こす魔法である。

 この魔法は俺がよく洗濯物を乾かすのに使っている。

 

「むむむ……」

「がんばれー」


 すると、ノルンの手の平から心地よい微風が出た。


「できたっ‼︎」

「おめでとう」


 先程まで難しい顔をしていたノルンが一気に明るくなった。

 兎みたいに、キャッキャと飛び跳ねている。


「レイっ、やったよ‼︎」

「よかったね」

「ふぅ、魔法使ったらお腹が空いてきたよ」

「それじゃあお昼にしようか」






 ⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎






「ふぅー、食った食った。ありがとね!!」

「どういたしまして」


 ノルンはよっぽど空腹だったのか、弁当を一瞬で平らげてしまった。

 そして、暫し二人で昼休憩をしていた。

 

「じゃあ、次何を覚える?」

「まだすんの?」

「えぇーせめてもう一個覚えようよ!!」


 ノルンが駄々捏ねだした、面倒くさいな。


「はぁ…わかったわかった」

「やったー!!」

「魔力切れに注意しろよ」

「何それ?」


 おいおい、マジかよ。


 魔力というのは、魔法を使う為のエネルギーである。

 魔力が無くなれば魔法を使えなくるし、それに加えてしばらくまともに動けなくなる。

 その為、魔法を使いすぎると良くないのだ……と、ノルンにちゃんと説明してあげた。


「へぇー、そうなんだ」

「だから魔力が少ない内はやり過ぎない方が良い」

「じゃあさ、どうやって魔力増やすの?」

「体が成長するにつれて増えたり、魔法を練習して徐々に魔力を増やしたり」

 

 魔力切れになった方が増えやすいとは、あえて言わないでおこう。


「だからちょっとだけだぞ」

「はーい」

 





 ⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎






 俺とノルンが出会って、半年が経った。

 魔法は順調に習得できている。

 魔術本は何故か家に沢山あるのでありがたく使わせてもらってる。

 

「ふぅ、ここら辺で休憩しよう」

「うん」


 そして俺達は、いつもの場所で昼休憩をしていた。

 ちなみに昼食は母さんの弁当だ。

 そして、ノルンはまた一瞬で平らげた。


「……ねぇレイ、私達出会ってもう半年なんだよ」

「もうそんなに経ってるのか」


 時間の流れが早い。

 思えばノルンと出会って俺は変わった思う。

 真っ暗だった人生が明るくなった、そんな感じ。


「十年、二十年経ってもこうしたいね」

「……無理だよ」

「え?どういう事?」


 だからちゃんと言わなきゃ、本当の事を。


「俺さ、実は不治の病で後十年しか生きられないんだ」

「え……?」

「隠しててごめん」

 

 俺はノルンに人生を明るくしてもらった。

 俺は会わない日も含めて毎日が楽しかった。

 それと同時に俺は、ノルンに恋をしていた。


 でも、それを口にはできない。

 俺が生きたくなってしまうから。

 

「どうして隠してたの……?」

「嫌だったんだ、ノルンを悲しませるのが」


 ノルンが泣いていた。

 不謹慎かもしれないけど俺は嬉しかった。

 ノルンが俺の為に泣いてくれた事が。


「ごめんね……」

「なんでノルンが謝るのさ」

「だって……私、何も知らないで……」

「いいよ、隠してた俺が悪いんだし……」


 途端、ノルンが俺を抱きしめた。

 

「辛かったね」

「え?」

「我慢しなくても良いんだよ」


 すると何故か、涙が溢れ出した。

 ノルンは暖かった。

 そして俺の頭を優しく撫で続けてくれた。

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余命十年の魔法使い へたれチキン @mamiyo0628

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