余命十年の魔法使い

へたれチキン

序章 少年と少女

第1話 とある少年の話と少女との出会い

 俺が十二歳の時、母さんが泣いていた。

 そして俺は泣く事もせず、ただ絶望していた。


 医者から言われた。

 俺は不治の病だった。

 しかも余命十年。

 どんな魔法でも治せないらしい。

 

 そしてその翌日から俺は部屋に引きこもった。

 部屋で何かする訳でもない、ただぼーっとしてるだけ。 


 ある日、気分転換に散歩を行ってみた。

 これは運命だったのかもしれない。


「ねぇ、そこの君、私と遊ぼ!!」


 出会ってしまった、あの少女に。






 ⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎




 


 俺はごく普通の少年だった。

 友達はいなかったものの、家で家事を手伝ったり、読書をしたり、散歩をする。

 そんな生活をしていた。

 余命宣告を受けるまでは。


 宣告を受けてからは、俺は人生のどん底にいた。 

 部屋に引きこもって、ただ時間が過ぎるのを待つ。


 母さんが作ってくれるご飯も味がしないし、そもそも食欲がない。

 でも食べなければいずれ餓死するので、無理矢理、胃に詰めていた。


 ただある日無性に外に出たくなった。

 気分転換に良いだろうと思い、母さんに散歩に行ってくると伝えてみた。


「レイ、本当に大丈夫?」

「大丈夫だよ母さん、ちょっと散歩するだけだから」

「そう…無理しないでね」

 

 母さんが心配してくる。

 無理もない、二ヶ月間も引き篭もっていたのだから。

 大丈夫だと伝えた後、俺は勇気を振り絞り、外に出てみた。  

 太陽が眩しい。

 余命宣告されて一歩も外に出てなかったが、たまには良いかもしれない。

 

(ひさしぶりに森の中を散策するのも良いかもな)


 久しぶりに俺は笑みを浮かべた。





 ⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎





 という事で森に来てみた、空気が美味しい。

 自然豊かで、鳥のさえずりが聞こえて良い気分になる。

 俺は森の自然を堪能しながら気が赴くまま歩いていた。


「ねぇ、そこの君、私と遊ぼ!!」


 ふと、少女の声がした。

 声のする方向に向いてみると、一人の少女が木の上に座っていた。


「え?俺?」

「君以外誰がいるのさ、それより私と遊ぼ!!」


 少女はトンっと綺麗に着地し、その美しい金色の髪をなびかせる。


「……名前は?」

「人に名前を聞く時はまず自分から名乗れよ」

「え…?」

「冗談だよじょーだん。私はノルン、よろしくね‼︎」

「あ、ああ俺はレイ、よろしく」


 俺はこの娘にちょっと恐怖を感じてしまった。


「えっと……遊ぶって何をして?」

「魔法を覚えよう!!」


 何なんだこの娘。それ遊びじゃないだろ。


「ま、魔法?」

「うん!!」

「あの……魔法なら一人で覚えれるよね?」

「一人じゃつまらないじゃん?」

「あ、そう……」

「って事で覚えよー!!」


 そんな事から俺は半ば強制的に遊び?に参加させられた。

 

「魔法って具体的に何を覚えるの?」

「んー、なんでも!!」

「なんでもって……」


 本当にこんな調子で大丈夫だろうか。

 ちなみに俺は簡単な魔法しか使えない。

 魔法と言っても、ちょっとした風を起こして洗濯物を乾かしたりするくらいだが。


「魔術本とかあるの?」

「本がいるの⁉︎」

「は?」 


 本来、魔法を覚えるには魔術本という魔法の教科書みたいな本が必要だ。

 一から魔法を作るのも可能だが、よっぽどの魔法使いじゃない限り、とても出来る事ではない。


「普通いるだろ……」

「えぇ……」

「はぁ……家にある魔術本持ってくるから明日また此処に集ろう」

「本当⁉︎ありがとう‼︎」


 本当に大丈夫だろうか、俺、心配になってくるよ。 


「明日も会うんだから、じゃあ私たち友達だね‼︎」

「友達……うん友達」

「えへへ」


 今思えば、どうして俺は友達になろうなんて思ったのだろうか。

 こうして俺は初めて友達ができた。

 

 

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