目的と手段
西洋の魔術に傾倒していたK氏は、ついになんでも願いを叶えるという悪魔を呼び出すことに成功した。
「およびでございますか」
地の底から響くような低い声で悪魔は言う。K氏は少し怯んだが、負けじと声を張り上げて命令した。
「呼んだとも!さぁ俺の願いを叶えろ!まずは金だ、お前を呼び出すために多くの金を費やした。手始めに金塊でも持ってきて貰おうか」
「お安い御用で」
K氏が瞬く間に、悪魔の足元にはずらりと金の延べ棒が並べられた。
「これは素晴らしい!」
「左様でございますか。ではお命をいただきます」
「何?命だと」
K氏は喜びのあまり忘れていたが、悪魔は願いを叶える対価に命を要求するのだった。
さっ、と血の気が引いたが、すぐにK氏は言い返した。
「まだ俺の願いは終わっていない、次は食事だ!俺は腹が減ってるんだ!」
「お安い御用で」
K氏が願いを言うたび、悪魔は瞬く間にそれを叶える。金も権力も、叶えられる願いは総て叶えられるのだ。思いつくまま願望を叶え尽くしたK氏は、しばらくしてある国の王になっていた。
金銀財宝は尽きることがない。ボタン一つで歯向かう国は木っ端微塵にできる軍事力を持ち、妻も愛人も選り取り見取り。
政治は優秀な秘書が行い、自分は玉座で判を押すだけ。
だが、悪魔はいつも側にいる。
「次は、そうだな。肩のマッサージを頼む」
「お安い御用で」
悪魔は慣れた手つきでマッサージを始めた。
K氏はため息を一つ吐いて独りごちる。
「人間の欲望には際限がないと言うが、そろそろ願いも尽きてきた。だがまだ死にたくない。一体次は何を願えばいいものか」
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