第28話

「君のお姉ちゃんは俺たちのものなんだよ。返すも何も、紗奈ちゃんは君のものじゃない」


「っ、何を言って……、」


里奈が怯んだように後退りして、怯えた目を私に向けてくる。

2人の絡みついてくる手を振り払うけど、全く意味が無い。


逆に強く絡まれてしまい息苦しさに、眉を顰めた。



「離してっ」


「紗奈、約束して。」


「いった、」


左にいた弟さんに耳朶を強く噛まれて、痛みに声を上げると。囁くように言ってきた。


「僕たちから逃げないこと。僕たちに従うこと。そして浮気を絶対しないこと。」


「!」


目を見開くと、佐久間さんが右耳へと唇を寄せた。そして底知れぬ闇を纏った瞳が私を射抜く。

ひゅ、と息を飲むと。


「紗奈ちゃんのことは何でも分かるからね。全て知り尽くしてるし、逃げられるなんて思わないでね。俺と薫を怒らせたりしないでね」


「いっ、う……」


「僕が言ったこと守ればいいだけなんだから、簡単なことだろ」


異常な言葉が囁かれ、身を竦める。



怖い……。


本当に私はこの2人から逃げられないんじゃないか、そう思ってしまったら余計に恐怖感が込み上げて。


私まで泣きそうになってしまう。


だけど、私のことよりも里奈をここから、この場から離してあげたくて。


必死に頷くと、2人は微かに笑いようやく離してくれた。

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