第27話

「兄さんたちの頼みなら聞かない訳にはいかないし、帰らせてあげる。」


拗ねたようにそう言うと、部屋から出て行ってしまった。


唖然としてしまっていると、私の目線に合わせるように腰を屈めた佐久間さんが私の頬に手を伸ばしてくる。


ビクッと肩を引き攣らせると、佐久間さんが口端を吊り上げた。



「今日から紗奈ちゃん達を守るためにもGPS付けさせてね」


「っ!?」


「晃、紗奈が寝てる時にとっくにやってたけど」


「ま、待って! 何でそんなことを……」


全く悪いだなんて思ってもいない2人に、頭が痛くなる。そんなの犯罪じゃ……。


いや、脅迫するのも犯罪だけど……。



「だって、ここに閉じ込められないんでしょ?」


「閉じ込める、ってその事もおかしいです……」



佐久間さんは分からないとばかりに首を傾げる。

いや、分かっててわざとしてるのかもしれない。


腰と頭の痛みに、項垂れていると。



「お姉ちゃん……」


「っ、里奈!」



ガチャと開いたドアにはっと顔を上げると、そこには窶れた顔をした里奈が涙を浮かべながら立っていた。


里奈の元へと寄ろうとしたけど、腰の痛みで直ぐには立ち上がれなくて呻き声を漏らすと佐久間さんと弟さんに抱きしめられた。



「っ、お、お姉ちゃんを返してっ」


か細く、震えた声に佐久間さんがクスクス笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る