絡みつく鎖

第26話

「っ、触らないでっ!」


絡みつくように伸びてくる手に暴れて、見下ろしてくる2人を必死に睨みつける。


「……うーん」


「紗奈って猫みたい。」


「あっは。確かにね。慣れない場所に連れてこられて、必死に威嚇してるって感じ?」


「うん。里奈の方はどうやら大人しくしてるみたいだけど?」


「薫それは怯えてる、の間違いかなぁ。」


あはは、と笑う佐久間さんに苛立つ。

私を馬鹿にしているとしか思えない2人に、触れてこようとしたら噛み付いてやろうと思ってると。



「本当はーここに監禁したかったんだけど、出来なくなっちゃったー。とっても残念だよ」


「玲央が可愛いからね、仕方ないよ。でも、僕たちが紗奈を交互に監視していればいいだけだよ」


「うんうん。というわけで、今日は帰らせてあげるよ」



「えっ!?」



残念そうにため息をつく佐久間さんに素っ頓狂な声が漏れた。


今、帰らせる、って言ったの……?


身体は2人に無理やりされて悲鳴を上げるほどキツいけど、その願っていた言葉に思わず目を輝かせる。



「り、里奈も一緒にですよね!?」


「里奈ちゃん? 玲央が帰らせるかなぁ〜」


「私が説得させますから、お願いします」



私1人で帰った所で里奈も一緒にじゃないと、何のために私が犠牲になったのか分からない。

何がなんでもそれだけは譲らない意思で、じっと2人を見上げると。



「玲央くん、里奈も"今日は"帰らせてあげたら?」


「っ!」


弟さんが、顔を少しだけ傾けてそう言った。

まさかこの部屋にもう1人いるなんて思ってもいなかったから、ビックリしていると。


ドア付近で腕を組んで身体を壁に預けていたその子が、ため息をついた。



この子は……昨夜、里奈を無理やり連れていった……。



警戒していると、佐久間さんと似た瞳が私を見つめて。

舌打ちをした。

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