第25話
「里奈愛してるんだ。愛してるだけじゃ足りないくらい」
「っ!」
伸ばされた手が私を捕らえようとする。
何でこんなにも玲央くんの言葉が怖いと思ってしまうんだろう。
まるで見えない鎖が私に絡みついてくるような錯覚に陥り、震えて動けない身体を必死に動かそうとするけど玲央くんに抱きしめられてしまった。
囲む、という表現が正しいような抱擁に身体の震えと涙が止まらない。
「里奈はお姉さんが大事だよね?」
何を当然なことを、と思うけど声が出ない。小さく頷くと微かに玲央くんが笑った。
そして私をどん底に落とすような言葉が紡がれた。
「お姉さんが大事なら、俺と付き合って。兄さん達はお姉さんを監禁するつもりだよ。」
「! そんなのだめっ! お姉ちゃんに酷いことさせないでっ」
監禁だなんてそんなの犯罪だ。
青ざめて慌ててお姉ちゃんを助けに行こうとするけど、玲央くんの力が強くて腕の中から逃げ出せそうにない。
「だから、俺と付き合えばいいんだよ。」
「な、何で玲央くんと付き合うの……?」
玲央くんと付き合ったからといって、どう変わるというのだろうか。
今はそんな話をしている場合じゃないのに。
お姉ちゃんが今、この瞬間でも大変な目にあってるかもしれない。
「兄さん達は俺を大切に思ってくれてるから、俺が止めるよう言えば止めてくれると思うよ。でも、里奈が俺と付き合わないというのなら、言わない。だって俺は里奈のお姉さんなんてどうでもいいからね」
「っ!」
「付き合ってくれるよね?」
涙を指で拭われ、視界がクリアになった。そして私の目に映るのはまるで私の答えなど分かりきっているという顔で微笑む玲央くんで。
ゆっくり近付く顔に拒否なんて出来なかった。
重なった唇に、また涙が溢れ出てしまう。
「あーあほんと里奈は泣き虫だなぁ」
「っ、お姉ちゃ……ん……」
「で。返事は? 里奈。」
お姉ちゃんを監禁から逃すのには、きっと私1人の力では無理で。
目の前にいる玲央くんの言うことに従わないといけない。
好きでもない人と付き合うのは……嫌だけど、お姉ちゃんの為には。
「わか、った。付き合う……だからお姉ちゃんに、監禁なんて……させないで」
「ふ。その言葉を待っていたよ」
口角を上げ、微笑んだ玲央くんは悪魔のようだと思った。
ーーその日から私は玲央くんに囚われることになったんだ。
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