第22話

「君。」


「っ!」


押し倒されている状態で、声を掛けられ肩をビクッと跳ねらせると。


じーと見下ろされ、そして。ふっと笑った。その笑みにあ、と思う。

玲央くんに似てる……というか、さっき玲央くん"兄さん"と言ってたから、兄弟なんだ。


「玲央のことよろしくね。玲央は僕達の可愛い弟なんだ。玲央から逃げようとしたり、反抗したら……容赦なく連れ戻すし、従わせるから。」


「ひっ!」


こ、怖い!

口元にだけ笑み浮かべたままなのに、瞳が全く笑っていなくて。

恐怖から涙を流すと、玲央くんが顔を近づけた。


「っ!?」


「しょっぱい。」


涙をペロ、と舐め取られて呆然としてしまう。べ、と舌を出した玲央くんは顔を顰めると、今度は私の唇を塞いだ。



「んっ!? んんんっ!」


唇に感じる感触に、はっと慌てて逃れようとするが身体を押し付けられて動くことができない。


何でキスなんて……!



「い、いやっ!」


何とか顔を背けた時には、息が上がってしまった。玲央くんのお兄さんがいるというのに、キスなんてされてしまったショックで身体が震える。



「里奈、泣いてる」


「っ、だ、誰のせいだと思って……、」


ボロボロと涙が零れ、悪いと思っていない玲央くんにムッとしてしまう。


キッと睨みつけると、玲央くんがまた涙を舐めとってきた。


「あ。晃から連絡あった。じゃあ、僕は紗奈と晃を迎えに行くから。」


こんな状況だというのに呑気にもお兄さんはそう言って、部屋から出ていってしまった。


2人きりになった途端、玲央くんがふふと笑う。



「里奈良かったね。一瞬だけだけど、お姉ちゃんに会えるよ。」


「玲央くん、離してっ! ひ、酷いよ、キスなんて……」


「だーめ。離しませーん。キスは酷くないよ」


「なっ!」


もう本当なんなの!?

玲央くんの軽い調子にその綺麗な顔を思わずひっぱたきたくなった。

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