第20話

グイッと引っ張られ、腕の中に抱き込まれてしまった。ふわりと香る柑橘系の匂いに、呆然としてしまう。


え…………?


「ふ。小さいね」


「っ……!?」


何で抱き締められているのか分からず、テンパってしまう。

目の前がぐるぐるしそうになるけど、とにかく離れようと玲央くんの胸板に手を置いて突っぱねようとした。


だけど、離すことを許さないかのように強く抱き込まれてしまう。


学校でも全く話さないというのに、何でこんな抱きしめられているの!?


「れ、玲央くん……離してっ」


「駄目。ねぇ、里奈のお姉さんは今日ここには帰ってこないよ?」


「え……?」


「伝言があるって言ったでしょ。里奈のお姉さんは俺の兄さんと一緒にいるんだ。それで、俺の家にいるよ」


「!」


お姉ちゃんが、玲央くんのお兄さんといる……。その事に驚いて目を泳がしてしまう。

玲央くんにお兄さんが居たなんて知らなかったし、お姉ちゃんがお兄さんといるなんてことも知らなかった。


そしてお姉ちゃんが玲央くんの家にいることに、困惑してしまう。


「お姉ちゃん、家に帰ってこないの……?」


「うん。だから、俺の家においで。お姉さんから里奈を迎えに行くよう言われたんだ」



お姉ちゃんがそう言ったんだ……。それなら、連絡入れてくれたら良かったのに。

そう思うけど、とりあえずお姉ちゃんが無事だということに安心した。中々帰ってこないことに心配してたから。

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