第21話
【慧side】
「あれ、兄さん」
リビングでテレビを見てると、眠そうな顔をしながら入ってきた兄さんの姿に声をかける。
23時過ぎだから、もう眠いのも当然だ。
どうやら飲み物を取りにきたらしく、水の入ったペットボトルを2本手に持った。
「まだ起きていたの慧」
「うん。あれ、美羽は?」
「美羽ちゃんは抱き潰したからぐっすりお眠中。それより、慧くん? 美羽ちゃんのこと呼び捨てするのは頂けないなぁ」
苦笑いしながら、ソファに座っている俺の隣に腰掛けて兄さんが少し低い声を出した。
どうやら呼び捨てが気に食わないらしい。
「でも、美羽がそう呼べって言うんだよ。姉さんって呼ばれるのが嫌だって」
「うーん。慧のことは可愛い弟だし、まだなんとか我慢出来るけど……やっぱり嫌だと思っちゃうんだよね」
「兄さんと美羽が籍入れたら姉さんって呼ぶから、それまではいい?」
確かに俺と美羽は同い年だし、姉さんって呼ぶのは俺もちょっと悩んだし、兄さんの大事にしている人には嫌がることはしたくない。
"美羽"と呼ぶのも後2年ぐらいだろうし、兄さんには我慢してもらうしか無いとしか言いようがない。
ううん、と兄さんはくぐもった声を出したけど諦めたように息を吐いた。
「うん、そうだね。どうせ後2年もすれば美羽ちゃんは本当の意味で俺のものになるしね。」
羨ましいな、と思う。
だって、兄さんと違って俺は……。
「あれ、咲は?」
今度は兄さんが不思議そうに首を傾げた。
思わずうっと言葉に詰まる。
居心地悪くて目を逸らす。
「またはぐらかされたよ」
「あー……」
兄さんは苦笑して、俺の頭を撫でてきた。
何で咲は答えてくれないんだろう。こんなに何回も好きだって言ってるのに。
いつも困ったように笑ってありがとう、と言うだけで答えをくれない。
どうしたら好きになってくれるんだ……。
もしかして咲は兄さんが好きなんじゃないかって思ったことが何回もあるけど、兄さんは絶対違うって言う。
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