第16話
「美羽に言わないでてごめんねぇ。樹に睨まれて怖かったでしょ?」
「あぁ。うん……」
まぁ、確かに怖かったよ。まるで憎まれているんじゃないか、と思ってしまったくらいには。
理由が嫉妬だっただなんて意外だったけれど。昨日の疑問が解決したから良しとしよう。
「昨日は睨んで悪かった。……佳奈と仲良くしてくれるのは許すけど、あまりベタベタしないで欲しいのが本音」
「あー……うん」
私からはあまり抱きついたりしないんだけど、と言いたくなったけどもういいや。
友人が幸せそうで何よりだ。
そろそろチャイムが鳴るだろうし、3人で教室に行こうかとした時。
「美羽ちゃん。楽しそうだね〜」
「ひっ!!」
後ろから聴こえてきた普段よりもワンオクターブ低い声音にビクッと身体を震わして勢いよく振り返ると。
そこには教室に行ったと思っていた累先輩がニコニコと笑みを浮かべて立っていた。それも口元だけ弧を描いている。
「美羽先に行くね〜」
サァと青ざめる私に、佳奈はふふふと態とらしく笑みを浮かべて矢田くんを連れて行ってしまった。
「美羽ちゃんってば俺が言ったこと忘れちゃったのかなぁ〜?」
「あ、う……これは……その、や、矢田くんに謝られて……」
「へ〜〜。で? それで美羽ちゃんってば喋ったんだ?」
「…………」
……私は悪くない。
不可抗力という奴ではないかと。
口答えするのすら許さないといわんばかりの雰囲気を出す先輩から視線を逸らす。
「美羽ちゃん」
「は、はい……?」
「今日は授業サボろうか」
黒いオーラを出す累先輩の言葉にひくっと口端を引き攣らせた。
学生でいる以上授業参加は必須なのに、ずるずると私の腕を掴んで何処かに向かう。
もうチャイム鳴っちゃうというのに、先輩はお構い無しだ。
これは授業に出られるのは何時間目になるのか分からない。
泣きそうになりながら、もう授業のこと以外で異性と話さないと改めて思うしかなかった。
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