第15話

何を言われるのだろうかと様子を伺っていると、何故か眉根を下げて困ったような顔をしている。


そんな表情をしていても矢田くんは顔が整っているため、惚けそうになる。


昨日までの威勢はどうした?

昨日と今日の矢田くんの違いに驚いていると、頭を下げられた。



「昨日は悪かった。」


「は?」



まさか謝られるとは思ってもいなくて、間抜けな声を出してしまう。

私より幾分も身長が高い彼が、頭を下げたことによって私よりも低くなってしまっている。


いや、それよりも。

学校で人気といっていいほどの矢田くんに頭を下げられている現場を他の人に見られたらまずい。


絶対に女子から恨まれる……!



「とりあえず頭を上げて!」



焦ってそう言うけれど、矢田くんはその体勢を直そうとしなかった。

どうしたものかと困っていると、矢田くんは口を開いた。



「佳奈と仲良くしているから、その…嫉妬した」


「は? か、佳奈……?」


え? 何で佳奈が出てくるの?

意味が分からず脳内がクエッションマークだらけになってしまっていると。




「あ、居た。美羽ごめんっ! 樹に何か言われてない?」



慌てたように駆け寄ってきた佳奈がいた。



「佳奈…え、樹って……」


何故か矢田くんのことを下の名前で、更に呼び捨てにする佳奈にギョッとする。



「あれ、言ってなかったっけ? 私と樹付き合ってるの」


「えええええ!?!? 聞いてないよ!?」



まさかの衝撃告白に驚いていると、矢田くんに近づいて腕に絡まった。

そしてふふと満面の笑みを浮かべる。



「樹ってば私と美羽の仲に嫉妬して、昨日は睨んじゃったんだって」


「えええ………」



女子相手にも嫉妬って……累先輩もだけど矢田くんも狭量が狭いなぁもう。


呆れながら二人を見ていると腕に絡まってる佳奈に矢田くんは嬉しそうな笑みを浮かべて佳奈の頭に頬を寄せてた。

普段は落ちついていてあまり笑顔を浮かべないストイックな印象なのに、目の前にいる矢田くんは別人かと思ってしまうくらい嬉しそうだ。



というか。


「矢田くんデレデレし過ぎ…」


ぼそっと呟くと、佳奈がふはっと笑った。

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