第13話

うん?と首を傾げると冷たい目線を向けてきた。


ビクッと身体を震わして、先輩から距離を取ろうとするけれど手を掴まれたままで全くビクともしない。


まるでその場所の気温が下がったみたいに寒気がする。ズーンと重くなった重圧に、引き攣った笑みを浮かべた。



「クラスメイトと話す? そう聞いてくるってことは……男とだよね? 何でかなぁ? 美羽ちゃんは俺以外の男と話す必要あるかなぁ? 無いよね? うん。絶対必要無い筈だ」


「ひっ!」



本能的に逃げろ!と言ってるのに手が全く離れない。

口元にだけ笑みを浮かべてるのが怖い。


というか息継ぎもせずに話してくるのが怖かった。


何でそこまで嫉妬するんだろ。


私が思うに浮気って抱きしめ合ったりキスしたりからだと思うんだけど、先輩の場合は違うらしい。



前に余りにも男子とちょっと授業のことで話した時に、しつこくどんな話をしたのかとか何で話す必要があったんだ、だの言われたので浮気は何処からだと思ってますか?と聞いたことがあった。


無理やり付き合うことになったけれど、これでも憎めない程には先輩に対して好意を抱いてはいるのだ。


いや、というか諦めているのだけれども。



『喋ったら、かな。』

なんと返ってきた返答はこれ。



うん。

おかしいよね。


思わず白い目を向けたものだった。



「話を聞いて下さい。なんか私のことを睨んでくる人がいるので理由を聞きたいなと思って」


「へぇ。俺の美羽ちゃんに邪な目を向けて来る奴がいるんだ? 命知らずな奴がいるんだね。そんな奴俺が抹消してあげようか」


「邪なって……意味が違う。なんかもういいです」



冗談だよね?

とても冗談に聴こえない声のトーンに、私を睨んでくる理由なんてどうでもよくなった。


累先輩のことを犯罪者にするわけにはいかないし。



累先輩の両親に申し訳なさ過ぎるもの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る