第11話
「美羽ちゃん」
あの後も矢田くんから悪意のある視線をもらいつつ、なんとか気にせずに授業が終わり、帰り支度をしていると教室がざわめいた。
何事かと思うが、疲れきった私にはどうでもいいことで。
いかに早く帰れるかが重要だったのだけれども。
嫌という程聞き慣れてしまった甘い低音の声に、引き攣りながら顔を上げた。
目の前に爽やかな笑みを浮かべた、目麗しい累先輩が立っている。
きゃきゃと騒ぐ女子の声と共に、私に対する陰口が聞こえてきてうんざりしそうになる。
というか学年違うのに、何で我が物顔で入ってきてあまつさえ私の目の前にいるのかなぁ。
私が虐めにあったらどうしてくれるつもりだ。
「教室来ちゃダメですって」
「美羽ちゃんのこと迎えに来たかったから。怒ってる?」
「う……。怒ってませんから、皆の前でそんな顔をしないで下さい」
そんな悲しそうな顔をしたら……、ほらっ!
私たちのことを伺っていた生徒たちが私の事を非難する目を向けているじゃない。
『先輩悲しませるとか酷いな』とか聞こえてきたしね。
「ほんとう? じゃあ、一緒に帰ろう。ね?」
途端に嬉しそうな笑みに変え、私が持つよりも早く鞄を持ってしまった。
うん、だから皆の前でそんなことしないで。
まるで先輩のことをパシリに使ってるって思われそうだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます