糖度120%

第8話

背後から抱き締められて身動き取れないままいると。

累先輩が耳に唇を寄せた。


「美羽ちゃん……胸大きくなったね」


「っ!?」


ふに、と胸を触ってそう言ってきた。


その発言は私にとっては禁句ワードで。堪らず私を囲う腕に思いっきり噛み付いた。




「痛! もう美羽ちゃんってば過激なんだから。あ、それとも今日はそういう気分なの? それなら、俺も頑張っちゃうけど」


「違いますから! 私が気にしてることを言ったから怒ってるんです!!」


「え違うの? 胸のこと? だって、実際大きくなったよね」


「ううう……」



確かに累先輩の言う通り、胸が大きくなっていた。前前まで使っていたブラが少し窮屈になってしまったのだ。

ただでさえ、胸が大きかったのがコンプレックスに感じていたのに更に大きくなってしまうだなんてっ。


「俺は美羽ちゃんが大好きだから、胸の大きさなんて瑣末なことだよ。前がEだったから、Fになったのかな?」


「!!」



問答無用で先輩のことを殴ったのは無理も無いと思う。

サイズを当てられて恥ずかしさももちろんだが、怒りも込み上げてくる。

何でこうこの人は無神経に言ってくるのか。



「美羽ちゃんがバイオレンス……」


「平気でサイズを言われたら誰だって怒ります」


「そう? 俺が丹精込めて育てたんだから、胸が大きくなるのも仕方ないと思うよ。ほら、胸を弄られると大きくなるって言うしね」


「そんな情報要らないです……」


どうでもいい情報を教えられてげんなりする。

とにかく原因が累先輩なのは理解した。




「ふふ俺は嬉しいけどなぁ。顔を埋めてみてもいい?」


「ダメです。ここが何処だか分かってますか」


「えーけち。なら夜に、だね。今日は美羽ちゃんのお義母さん仕事でいないもんね」



どうしてお母さんがいないと知って……いや、お母さんが教えたのか。


ギュウギュウと抱き締められて流石にもう息苦しい。

お昼ご飯を食べた後だから余計に苦しく感じる。


毎日強制的に一緒にご飯を食べることになっており、誰も通らない空き教室は私と先輩がもっぱら会う場所となっている。


いつも思うんだけど、他の人も逢瀬(?)するんだったら空き教室って穴場だよね。

なのに、今まで誰一人来た試しが無い。


多分、この人が何かしら手を出してる気がするけどきっと真実は知らない方が私の為だろう。



「はぁ〜何で美羽ちゃんと学年が違うんだろ」


「年齢が違うから仕方ないかと」


「同じクラスだったら絶対机くっ付けて一緒に授業取られるのにね。残念だよ……俺が留年するっていう事も考えたけど、早く美羽ちゃんを養いたいから諦めたけど」


「諦めてくれて良かったです。それよりもきわどい所を触らないでもらいたいですっ」



同じ学年で同じクラスだったら、絶対大変な事になってた。ただでさえ会った瞬間、閉じ込めるみたいに抱き締めてきたりするのに。


同じ教室に居て皆の前で抱き締められたり、キスなんてされたら恥ずかしくて学校に行けなくなってたかもしれない。


年齢が1つとはいえ離れていて本当に良かった。

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