第7話

『コレクションを見せてあげる』


漸くご飯を食べ終わり、ぐったりとしていると累先輩はニコニコと笑いながらそう言って部屋を出て行った。


コレクション……コレクション……ねぇ。

前に見せられたものは1冊のアルバムで、中身は全て私の写真だった。

どれもカメラ目線のものが一切無くて、更に撮られた記憶が全く無いもので。


盗撮だった。


自慢げに私にあれこれと説明しながら、見せた先輩に苛つきその場で写真を抜き取ってビリビリに破いたのだけれども。

顔を青ざめてショックを受けた表情をした先輩に少しスッキリしたけれど次の日には同じものをまた持っていて、唖然としたんだっけ。


そしてそのアルバムは私がまた破かないように、厳重に鍵をかけられた箱に仕舞ってるらしい。


前にチラッと見た時にはそのアルバムが3冊になってたのに恐れおののき、私はもう気付いてないフリをすることに決めたんだけれども。



ーーガチャ


今度は何をコレクションしているのかと嫌な予感にため息をついてると。

戻ってきたらしい。



「美羽ちゃんお待たせ。いやー、やっぱり見てしまったら興奮しちゃってつい遅くなっちゃった。ごめんね」


「全然待って無かったから大丈夫ですよ。むしろ戻って来ない方が良かったですから」


うん。手に持ってる物を見て項垂れそうになる。

それは、見覚えがあるなぁ……。

というか、私の物だ。



「私のタオル……」


いつの間にか使っていたタオルが何枚も無くなってしまってたんだよね。

いくら探しても見つからない筈だ。

先輩が持ってる(盗んだ)のだから。



「これは昨日使ってたもので、これなんかは美羽ちゃんと出会った3ヶ月と12日前のものだよ! そしてこれは美羽ちゃんと初めて結ばれた日に貰ったものでーー」



タオルを1つ1つ手に持って、私に見せてはいつのものか説明してくる。

はっきり言って気持ち悪いを通り越して恐怖しか感じない。


何でこの人こんななんだろう。

外見だけ見れば完璧なのに。内面を晒した瞬間、残念な人だ。



「も、もういいです……。それに貰った、は表現の仕方おかしいですよね? 勝手に盗んだんですよね?」


「違うよ。目の前にあったからありがたく貰ったんだ」


「いや、盗んだんじゃないですか! 私、探してたんですからね。通りでいくら買っても無くなってしまう筈ですよ」



今度のコレクションと呼ぶものは私の盗んだタオルことらしい。

勝手にコレクションされても困るのだけれども。



「あぁ、そんな怒った顔も可愛いね。美羽ちゃんの物は何でも欲しいと思ってしまうんだから仕方ないよね」


仕方ないで済ませないで欲しい。

怒った所で余計喜ばせるだけだと思いとどまり、憂鬱なため息を吐くことしか出来なかった。



その後もご機嫌な様子の先輩に抱き締められて眠りに誘われるように目を閉じたのだった。




ーーー

ーーーーーー



「ふふ。かーわいーなぁ〜」


俺の腕の中で眠る美羽ちゃんが可愛くて至福な時間を過ごす。

こうやって安心して眠ってるのも俺を信用してくれてるからだよね。


本当のことを言えば、ずっとこの部屋で過ごして欲しいけれど美羽ちゃんのお願いはきいてあげたいから我慢して学校に行かせてあげる。


明日ほどっちにしろ休む連絡を入れてしまったから、行かせないんだけども。



「美羽ちゃんを閉じ込められたらいいのに」


ポツリと本音を漏らすと、美羽ちゃんが眠ったまま身震いをした。

寒さを感じたのかな。


この子と出会ってから、他の女の子になんか目がいかないし他の誰でもない美羽ちゃんたった1人が欲しいと思ってる。


だから、美羽ちゃんの物は全て欲しい。


だって仕方ないよね。



「愛してるんだから」



絶対逃がしてあげないよ。

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