第6話

【美羽side】



「……、」


ニコニコと笑顔で差し出されるフォークに刺さったものをじっと見つめ、ため息をつく。

このままじゃ埒が明かない。


諦めて口を開くと、口の中へと運ばれてしまった。


むぐむぐと食べると美味しいくて笑みが零れそうになる。



「どう? 美味しい?」


「はい……。あの、降ろしてもらえたら……」


「だめ。俺が食べさせてあげたいんだから、大人しくしてて」



そう、私の体勢といえば先輩の膝の上に横抱きで乗せられてあまつさえ食事まで先輩の手によって食べさせてもらってる状態で。


恥ずかし過ぎて泣きそうだ。



「先輩は食べないんですか……?」


「先輩じゃなくて名前で呼んでよ。俺は美羽ちゃんに食べさせてもらえるのなら食べようかな」


「うぅ……」



こんな体勢じゃ、食べづらいだろうに。

何でそんな嬉しそうな顔をするのだろう。無下にも出来なく、お皿を持って魚のムニエルを1口大にフォークで切ってそのまま乗せる。


そしてそのまま先輩の口へと運んだ。



「ん……美味しい」


「っ! どこ触ってるんですか!」



先輩のシャツを羽織らされているだけで、太ももが大胆にも出てしまっているのだけれど、太ももを撫でられ顔を顰める。


撫でてくる手を払いたいけれど、お皿を持っているのでぐっと我慢する。



「美羽ちゃんの身体は何処に触れてもすべすべで柔らかいよね。はぁ……また抱きたくなっちゃった」


「だ、だめですからね!?」



ギョッとして身体を仰け反らせそうになる。

だけど背中に添えられている手がそれを許さないとばかりに先輩の方に引き寄せられてしまう。



「ふふ。大丈夫だよ。美羽ちゃんに触れられているだけで満足しているから。多分、今のところは大丈夫」


「……、」


多分って信用ならないし、今のところという発言が怖い。

これ以上触られて襲われでもしたら、大変なことになるのは目の見えているのでご飯の方に集中する。



「ねぇ美羽ちゃん、いっそのことここに一緒に住もうよ」


出た。

無理やり付き合わされ、初めてを奪われた時から言われている内容で、ため息をつきそうになる。



「駄目です。私には家がありますから」


「美羽ちゃんのお母さんもこの家に住めばいいんだよ」


「はい!? 何でそうなるんですか!?」



ぶっとんだことをサラッと言った先輩に頭が痛くなる。

あ母さんも住めばいいってバカじゃないのかな。何で彼氏(不本意だけれども)のお家に私のお母さんも住むのよ。


名案だとばかりに目をキラキラさせて見つめてくる先輩にイラつく。



「しませんからね。それに累先輩のお母さんたちにも迷惑かけますでしょうし」


「ああ。俺の両親は大歓迎だから何時でもいいよ?」


「……しませんよ……」



何で駄目って言わないんだよ!!

どう考えたっておかしいでしょ!

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