第24話

「目、逸らすな」



目を背けていると、普段の声から数段と低い声にビクリと身体が跳ねる。

冷たい声音にぐぐっと動きたくもないのに目線が向く。


思わず悲鳴を上げそうになったが、口を手で覆われてしまった。



「こんなとこじゃ流石に可哀想かと思ったけど……やっぱやーめた」


「んぅ、んん!?」


「逆らう気が起きなくなるくらい徹底してやんなきゃやっぱ駄目だよね」



いきなり口を覆われてくぐもった声を上げた。


誰かが来ないかと目線を教室の扉の方へと向けるが、只でさえ空き教室だ。

用もないのに誰かが来るとは思えない。


大翔くんが顔を近づけ、首筋に顔を埋める。歯を立て噛みつかれビクッと震えると笑う声がした。



「誰かが助けてくれる、って思ってる? まさかそんなわけないよね」


「……っ」



期待してしまったことを指摘され、動揺してしまった。

なんてタチが悪いのだろうか。

分かっててわざわざ聞くだなんて。



「来るわけないよ。もう授業始まるし」



休み時間になって教室を飛び出してから大分時間が経っている。つまり、もう休み時間は終わりだ。


まだ口を手で塞がれていて声を発せないが、目で必死に訴える。

いくらあのクラスの中にいるのが嫌だとしても、授業は受けなくては。



「あれ、まさかこのまま解放されるって思ってる? 逃がすわけないのに馬鹿だね」


「……っ!?」


「罰はちゃーんと受けて貰わなきゃ、ね」





ーーその直ぐあとに私はこの場所で初めてを奪われた。

容赦なく身体を喰い尽くすと表現しても過言ではないくらいに凌辱された。


痛みと自分の心を裏切る身体に絶望しか感じなかった。

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