第23話

素肌に空気が触れて身体を強ばらせる。

こんな所で何をしようとしているのか……考えたくないのに、まさかという思いがこみ上げる。



しかし、ぴたっと止まった大翔くんの手に目を見開くと。

フッと歪んだ笑みで見下ろされた。



「ははっ。なあに、その顔」


「っ……」


「まさかこんな所で襲われると思った?」



カアッと顔に熱が孕む。

図星だった。恥ずかしくてバッと顔を背けた。


そのつもりなのだろうと思っていたが、違ったの……?

じゃあ、この体勢はなに?


この体勢でいると落ち着かないので、手が使えない今、身体を使って抵抗しようとすると。



「どうしたら俺から反抗しなくなるかなって考えたんだよね」


「反抗……?」



思わず身体を強ばらせる。


確かにさっきは反抗しようとしたけど、今までに反抗なんて出来た試しがない。


反抗したくても出来ないように言葉巧みに扱われて、脅されてきたというのに。

身に覚えのない言葉に眉根を寄せる。



「だって俺から逃げようとするでしょ? それに俺と別れたいとも思ってるだろう」



何を、何を言っているのこの人は。

そんなの当たり前じゃない。


好きでも何でもないと言うのに無理やり恋人にされて。

更に教室中で孤立するようにされて、監視するようなことされていて好きになれるわけない。


じっと私を見下ろすその仄暗い瞳に嫌悪を抱く。

私のことなんて見なくたっていいのに。


その瞳を他の女の子に向けてくれればいいのにと何度思ったことか。

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