消せない記憶【修正済み】

第20話

あれは大翔と付き合うことになって数日経った日のことだ。


私の気持ちを無視して無理やり付き合わされて、皆からの視線に耐えられなくなって。

休み時間になった途端、教室から逃げ出した。


とにかく1人になりたかった。

空き教室を見つけて、ロックをかけた。


意味は無いだろうけど、気休めにはなるはず。



(何でこんなことに…)



重々しいため息をつくと、隠れるように膝を抱えてしゃがみ込んだ。

全く関わりのなかった人にいきなり告白されて、断ろうとしただけなのに。


断りの言葉を口にした途端、あんなにも皆から冷たい視線を向けられるなんて想像なんて出来るわけなかった。


友達だと思っていた子から無視されてしまうなんて……泣きそう。


まだ罰ゲームだって言ってくれたらよかった。




クラス内で孤立している状況に、一人でいいと言っていられるほど強いわけじゃない。

学校が違う親友のところに行きたい。


膝に顔を埋め必死に泣くのを我慢していると。



静かに空いた教室のドアにはっと顔を上げる。やっぱり直ぐに開けられてしまうよね……。


そこには、無表情の大翔くんが立っていた。


思わず無意識に微かに出た悲鳴。



「何でこんなとこにいるの」


「あ……」



はぁ、とため息をつくとドアを閉め近づいてくる。

逃げ出したくなったが、咄嗟に動くことが出来ない。気がついたときには、目の前まできていた。



「あいつらが休み時間になったら優香が急に教室から出ていったって言うから、探したらこんなとこにいるし」



探しにこなくていいのに。

一人にして欲しかった、と言いたくなったが口を噤む。

それを言ったらどうなるか分かってしまう。


酷い目に合うのは自分だ。

もうこれ以上嫌な目には合いたくない。

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