第11話
▫️
「ん……」
ゆっくり目を覚ますと、寝室のベッドで寝ていた。
あれ……。いつの間にベッドにいたんだっけ。
思い出そうとしても、思い出せず起き上がろうとしたとき。
「うぅ…っ」
あらゆる所の痛みに思わず身体を縮こませた。
い、痛い。
ズキンとした首筋に手を無意識にあてると、そこにはガーゼが貼られていた。
ああ、そっか。
消毒液の臭いに、大翔が治療してくれたんだと気づく。
今何時なんだろう。
時計を確認しようと目覚まし時計へと目を向けようとした。
その時だった。
「起きた?」
「あ…う、うん」
ドアから顔を覗かせて、微笑んだ大翔に頷く。
「水飲むでしょ」
そう言われて喉が渇いていたことを知る。
大翔の手にはコップがあった。
無言のまま頷くと小さく笑った気配を感じた。
コップを貰おうとしたが、止められてまう。
「大翔?」
首を傾げると、大翔はコップに口を付けてしまった。
そのまま水を飲め始めてしまう。
てっきり私にくれるものだと思っていたのに。驚いていると、ぐっと後頭部を引き寄せられて口付けされてしまう。
「んんっ!?んっ…」
「……」
飲んでいたと思っていた水が口を開いた途端、流れ込んできて目を見開く。
舌を絡ませられ、抵抗も出来ずに水を飲み込んだ。
溢れてしまった水が口の端から零れてシーツに落ちた。
「ダメだよ、零しちゃ」
「大翔が無理やりしたから」
私は悪くないと思う。
濡れた口を拭うと、大翔がベッドに腰掛けて脚を組んだ。
「本当は」
「…?」
「優香には俺がいないと何も出来ないようになって欲しいんだよね。俺が全部優香の世話をしてあげたい。ーーだけど、今はまだ早いよな」
私の頬を撫でて仄暗い笑みを口元にだけ浮かべた大翔に背筋がゾワッとする。
目を見開き、見返すことか出来ない。
「まだ準備ができてないから…。だから、今はまだ"自由"でいさせてあげる」
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