第10話
「……大翔、行っちゃ駄目だよね……?」
「むしろなんでそんな当然の事聞くの?」
「……こ、断っておくから、」
「じゃあ、いいよね。俺から返信しておくから」
「え…」
勝手に指を素早く動かして、返信をしてしまったらしい。
もう用済みだというようにスマホをテーブルの上に置かれた。
私からちゃんと返信したかったのに。
大翔がなんて返信したのか確認しようと手をスマホへと伸ばしたが、その手を強く掴まれてしまう。
「もう俺以外のこと考えないでくれないかな」
そのまま引き寄せられて、気付けば大翔の膝の上に向かい合って乗る姿勢になっていた。
背中に手を回され、抱き寄せられる。
首筋に顔を埋められ、鼻を摺り寄せられた。
「んっ」
くすぐったさに声が漏れ、恥ずかしくなってギュッと目を瞑る。
次の瞬間、チクッとした痛みが首筋に走り身体を跳ねらせた。
「痛っ」
痕を付けられたことにハッとして、慌てて大翔に言う。
「大翔、あまり見える所に付けるのは……」
「あぁ。気付いたんだ? 隠す為に髪を下ろしたの?」
「き、気付いてたの? 葉月ちゃんに言われて、気付いたのに。」
気付いてたのなら、言って欲しかった。
「葉月? あぁ、あの。それよりまた俺以外のこと考えてる」
「ごめんなさーーんんっ!」
何度も何度も少しずつ場所をずらして、吸い付かれたり、噛みつかれたりする痛みに声が出そうになるのを手で口を塞いでおさえる。
どのくらい経ったのかわからないけど、漸く大翔が満足して顔を上げてくれたときには息が上がってしまっていた。
「はは。いっぱいついたね」
「っ……」
指でなぞられた箇所を見下ろすと、さっき大学で見た時よりもギョッとするほど赤い痕が何か所もついていた。
中には噛みついた痕まであり、色が赤よりも紫になっている箇所もある。
「優香は肌が白いから映えるよね。綺麗だ」
大翔の視線からそっと逃れるように目を瞑る。
綺麗だと言うけど、私は全くそう思わない。
首筋だけじゃなく、胸やお腹、太股にも大翔は痕が残すのが好きで痕が残っているけれど見るだけで不快な気持ちになる。
綺麗というよりも汚いといったほうがあてはまるであろう、痕だらけの身体に悲しくなる。
「いい? 優香。優香の全ては俺だけのものなんだから、他のやつと一緒に何処にも行っちゃダメだよ。前に会わせてあげたのは優香が一生懸命頼んだから仕方なく許可しただけで、絶対に駄目。」
「っ」
そう言いながら私の首筋に再び噛みついた。
今度は容赦ない痛みに呻き声と涙が出る。
痛い……。
大翔の唇に微かに血が滲んでいるのが見えた。
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