第28話

「窮屈? 何を言っているの絢子は。絢子がそんな事思う筈が無いじゃないか。」


「やっ、」


「絢子は僕と一緒にいられるのが幸せだろ? そうじゃないとおかしい。絢子は僕がいないと生きていけないんだから。だから二度とそんな事言わないでくれるかな?」


「っ……」



尊くんが歪んだ顔で真っ直ぐに私を見下ろしてくる。


まるで私がおかしいと言わんばかりに言ってくる尊くんに唖然としてしまう。


怖いのに。ここから逃げ出したいのに。身体が全く動かない。



「絢子にあまり傷付けたくないんだ。だから、僕に傷付けさせないで。」


「っ、やっ! やだっ! 待って、尊く、」


「駄目だよ。悪いことする絢子にはお仕置しないと。僕を拒絶するなんて許さないよ。」


「っうあっ!」



ガリッと音がする程、強く喉元を噛まれ痛みに涙を零す。

血の匂いが鼻を擽り、血が出でしまったのだと分かる。



「痛い?」


「っ、」




当然のことを聞いてくる尊くんに、涙を流しながら小さく何度も頷く。


「痛いよね。でも、僕はもっと痛かったよ。絢子がここから逃げようとしたなんて聞いた時、胸が締め付けられた。僕がこんなに傷ついたんだから、絢子にも痛い思いしてもらわないと割に合わないからさ」



傷がついた箇所をわざと抉るように舌で舐めとってくる。

酷いのはどちらだというのだろう。



ろくな抵抗なんて出来ず、されるがままにされていると漸く尊くんが顔を離してくれた時には息が上がっていた。

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