第26話

「……ーーはは。隠れんぼ? 馬鹿だね絢子は。隠れられる場所なんて無いのに。」



部屋に入ってきた尊くんが一瞬、間を置いて嘲笑った。

自分でも馬鹿だと思う。


直ぐに見つかるのに。



「あーやーこ。ここかなぁ」


態となのか、探すフリをする尊くんに身体が震えて仕方ない。

……態とそういうことするんだから、尊くんは性格悪いんじゃないだろうか。


必死に息を潜めていると、尊くんがふふ、と笑う声が響いた。



「なーんてね。絢子隠れんぼはお終い。見つけたよ。」


「ひっ!」


勢いよくクローゼットが開けられ、冷たい目をした尊くんに無理やり引き出されてしまう。


ドサッとカーペットに倒れた私に、尊くんが覆いかぶさった。



「っ、あ……あ、」


上手く言葉が出なくて、焦っていると首へと手が伸ばされた。

ぐ、と掛けられる指にケホッと咳き込む。



「聞いたよ。ここから出ようとしたんだって? 絢子は何処に行こうとしてたの? 僕のところ以外何処に行けやしないのに。絢子は優しい子だから自分の親を見捨てられる筈ないものね。」


「っ、ご、ごめんなさい……あの、」


「あぁ。いいよ。謝罪なんて求めてないから。それに謝られたって許さないから。僕が優し過ぎたのがいけなかったんだよね?」


「ーー!」



取り付く暇もなく尊くんがそう言い捨てた。


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