第25話

男の人は当然のように慣れた手付きでスマホを操作して電話をかけてしまっていた。


愕然としながらも立ち竦んでしまっていると、目で部屋に戻るように言われてしまう。


ーーパタン。

閉じたドアを見て、身体が崩れる。


なんてバカなことを思ってしまったんだろう。

後悔したってもう遅い。

尊くんが帰ってくるまでは1人でいれた筈だったのに、自分で壊してしまった。


そして身体が恐怖心で震えた。

尊くんが帰ってきてしまったら、酷いことされる。


身体中きっと痣が残るほど噛まれて、そして、眠ることすら許してくれない。何度も何度も謝って……ーー。



「っ!」


嫌だ。

あんな地獄のような快楽をまた味わいたくない。

逃げ場なんて何一つないけれど、私は震えて動けない身体をなんとか引き摺った。


唯一隠れられる場所がクローゼットだった。

出来るだけ身体を縮めて息を潜める。


こんな事しても無駄なのに……。

分かってるけど、どうしても直ぐに帰ってくるであろう尊くんと対面したくなかった。



数十分後ぐらい経ったのか。


慌ただしい音が聞こえ始め、悲鳴を上げそうになったのを慌てて口を手で塞ぐ。

お願い……尊くんが帰ってきたわけじゃありませんように。



だけど現実は残酷で。



ーーバタン!!


勢いよく開けられた部屋の扉の音に涙が零れた。





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