第24話
ずっと、尊くんが帰って来なくて1人で居られたらいいのに……。
そして自分の家に帰れたらいいのに。
そう思ってしまったことに、涙腺が緩む。
ぽたぽたと落ちていく涙がシーツへと滲んでいく。
何で私はこうなってしまったの……?
私はただ普通に、ただただ平和に過ごしていただけなのに。
(辛い……もう辛くて……)
「……逃げたい。」
尊くんがいないのなら、自分の家に帰ることも……可能なんかじゃないかって。
ふと視界に私の為に用意された服が入った。
下着も尊くんが用意してくれたんだろうけど、サイズがピッタリでいたたまれない気持ちになる。
自分の汚れた裸姿を見たくなくて、服を身につけるとドアへと足を向けた。
このまま誰にも気づかれず、外に出られれば。
そう思ってたけど、考えが甘かったみたいだ。
「いけませんよ。部屋から出ては。」
「ーーっ!!」
急に声を掛けられて驚いて、ビクッとして声の方へ振り向くと。
背筋を真っ直ぐに伸ばした執事服を着た男の人が立っていた。
見下ろされるが、その瞳にはまるで軽蔑のようなものが混じってる気がして息を呑む。
「貴女、今何処に行こうとしてましたか? 尊様からここに居るようにいわれている筈ですが?」
「あ、その……」
ため息混じりに聞かれ、しどろもどろになってしまう。
なんて言葉を返すのが1番なのか分からず頭の中がパニックになる。
「尊様の命令で貴女が逃げようとしないか見張っておりましたが……。本当に部屋から出ようとするとは思ってもいませんでした。直ぐに尊様に連絡させていただきますね」
「や、やめてくださいっ! お願いします……ただ、ほんの少しだけでも外に出たかっただけで……」
尊くんに連絡が行ったら、どうなるか。
想像するだけでも、怖いのに……。
きっと青ざめた顔をしているに違いない。
無理を承知てお願いするけど、目の前にいる男の人は首を横に振っただけだった。
「私は尊様に命令されているだけなので。申し訳ございませんが、貴女様のお願いは聞けませんね。」
「…………、」
微かに憐れんだ目を向けられ、思わず目を逸らす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます