"自由"とは。
第19話
「ねぇ、なんで高宮さんって四条くんと一緒にいるの? どう考えても、釣り合ってないよね?」
トイレから出た瞬間、目の前にいた同学年の女の子にじっと見つめられたかと思うと、嘲笑いながら言われた。
パチッとした大きな瞳に、透き通るような白い肌。そして真っ赤に染まった唇は何処となく色気を感じる。
ふわふわのパーマがかかった髪は彼女によく似合っていた。
そしてそんな彼女のことを知っていた。
矢口さんは尊くんに陶酔していて、尊くんを狙っているという噂の女子の1人だから。
尊くんと一緒にいるようになって彼女から悪意のある視線を向けられていたのは知っていた。
そして、私に話しかける機会を伺っていたことも。
「私も、そう思うよ……。」
矢口さんと違って私は尊くんのことを好きとは思えないし、容姿だってなんの特徴もないといっても過言じゃない程、平々凡々だ。
平凡というよりもむしろ地味だと自分でも思う。
だけど、目立つことが苦手な私にとってはこの容姿は周りに溶け込めるからいいんだけどね。
尊くんと関わる前だったら、それで良かったけど、尊くんと一緒にいることを強要されてからはそうもいかなくなってしまった。
私の陰口を言われているのも知っているし、釣り合ってないと直接言われたこともある。
それは私にではなく尊くんに言って欲しい所だけど……。
私から尊くんに付き纏っていないのに。理不尽だ。
そう言いたくなるのを唇を噛み締めることによって堪えると、矢口さんが距離をつめた。
矢口さんの付けている香水なのかふんわりと甘い香りが鼻腔を掠めた時。
「四条くんと別れて。四条くんに同情してもらったのか何だか知らないけど迷惑かけてるの分からないの? 四条くんにはもっと相応しい人がいるの」
「っ、いった……」
ギリッと手首を爪を立てて掴まれて、痛みに眉根を寄せる。
爪を伸ばしているからか、肌によくくい込んで鋭い痛みが走る。
「四条くんと付き合うのは私なんだから」
ギロっと睨まれて、矢口さんは鼻を鳴らすと去っていった。
呆然と立ち尽くして、これぐらいで済んで良かった……と思う。
授業がもう始まるからだろうけど、トイレに閉じ込められたりしなくて良かった。
前に違う女の子からされそうになったから、まだこれくらいならいい。
「高宮さん。授業始まるよ」
「っ!?」
トイレから出て無意識に立ち尽くしてしまっていた。
ぼんやりと手首に出来た爪痕を見ていると、ふと声をかけられた。
びっくりして顔を上げると。
そこには前に私の監視役だと言われた彼が何を考えているのか分からない顔で私を見つめていた。
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