第20話
「僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない」
あの後どうやって帰ったのかも覚えていない。
記憶が酷く曖昧なのだ。
まるで、記憶と時間が断片的に抜け落ちてしまったような感覚だった。
「僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない僕は悪くない」
気づいたら家に帰り着いていた。
鍵のかかった自室で、布団を頭からすっぽり被り、胎児のように体を丸める。
この世界から自分を隠したつもりだった。
だけど、悲しいことに、どれだけ身を隠しても自分自身から逃げることはできないのだ。
先程まで流していた涙のせいか、顔がズキズキと痛んだ。
鏡を見る勇気は無いが、きっと醜く腫れ上がっているだろう。
「僕は悪くない」
震える声で、もう一度声を紡ぐ。
仕方なかったんだ。
蒼空は自分に言い聞かせるように繰り返す。
あんなことを色羽は未来永劫知る必要がない。
あのまま豊川を放置していたら、色羽は知る必要のない真実を知ることになっていた。
だからって殺そうとしていいのか。
あれしか方法はなかった。
いや、もう分かっているはずだ。
「僕は――」
全て悪いのは僕だ。
『ハハッ!そうか!君がそれを持っているということは、君が弦太さんを殺したのか!』
あの男の嘲笑うような声が、まるで呪いのように頭の中で木霊する。
がたがたと震える手で、首にかけたままだった銀の鍵を強く握りしめる。
心なしかいつもより感触が冷たいような気がした。
「ぼくは――僕は化け物になってしまった。僕はもうみんなのところにいられない」
これからどうしようか。
頭が真っ白にかき乱されて、何も考えられない。
だんだん眠くなってきた。
疲れ切った精神が眠りを求めているのだろう。
後のことは起きてから考えればいい。
どうせ全て手遅れなのだから。
あぁ――あれが夢だったら良いのに。
瞼が重たくなっていく。
意識が闇に溶ける中、蒼空は小さく祈った。
これから見る夢が、せめて穏やかな夢でありますように。
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