第6話

 蒼空は大学の課題に関する本を探すため、家から徒歩15分程のところにある図書館を訪れていた。


 ここ5年のうちに建設された図書館は、モダンなガラスと鋼鉄の構造で、透明性と開放感を強調すような外装をしていた。


 この図書館は蒼空が小さい頃に閉鎖されたショッピングモールを転用して作られたものであり、中には本棚や読書スペース、展示コーナーだけでなく、カフェや雑貨店などもあり、学校終わりの学生や子供連れの主婦など連日多くの人で賑わっていた。


 モダンな家具が配された広々としたロビーを抜け、ロビー近くの白色の検索機のところに行く。


 タッチパネル式の検索機に、事前に目星をつけていた本のタイトルをいくつか入力する。5冊ほど候補があった内、現在貸出可能なのは3冊のみだった。


 本が配架されている場所を検索機で発券し、その場所に向かう。


 蒼空の出席している授業の教授は講義が全くわからないということで有名だ。


 蒼空もその噂を知っていたので、ある程度覚悟しながら受講したのだが、その教授の授業の分かりづらさは噂以上だった。


 その教授は、学生も教授と同じような知識があると勘違いしているのか、授業内で自分より知識のない者に分かりやすく説明するということを放棄していた。


 先日の授業などは、全て訳の分からない数式を板書して、訳の分からない用語をつらつらと並べていたので、内容の理解は困難を極めた。


 蒼空も何を言っているのかさっぱり分からなかった。


 いや、あの講義に参加した学生の大半は理解できなかっただろう。


 教授は次回の講義までに今回の講義の内容をまとめてくることを課題とした。

 なので、蒼空は難解な用語と数式の解説を入手するために図書館を訪れたのだった。


 階段を登り2階に行くと、目的の書架に到着した。

 発券された紙を見て、それを元に本を探し出す。

 ジャンルが一緒だからか、目的の本は同じ場所にかたまっており、見つけ出すのは容易だった。


 本を左手で持ち、1階の貸出機へ向かう。


 ここで読んでもいいのだが、この図書館は人気なだけに中学や高校の同級生もよく来るので、あまり顔を合わせたくなかった。


 蒼空が書架を後にしようとしたところ、頭に軽い衝撃が走った。

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