第4話
「まさか、こんなに多いなんて聞いてないって……」
蒼空は買い出しを終え、息を切らしながら家への帰路についていた。
両手は買い物袋で塞がっており、買い物袋の中はどちらともパンパンで、下手な運び方をすれば買い物袋が破れるのではないかと感じるほどだった。
紐の部分が手に食い込み、あまりの重さに腕がつりそうになるが、何とか気合で耐える。
おそらく母は色羽と蒼空の2人で買い物に行くことを前提として、あのメモを残したのだろう。
この量は、1人ではなかなかにキツイ。
こういうときに車があれば大変便利なのだが、残念ながら運転免許は持っていない。蒼空以外の3人は高校卒業前に取得しているので、蒼空もこの夏にでも免許を取得したいと考えていた。
車があれば、こういう買い物も自分がやればいいし、現在電車で通っている大学への通学もだいぶ楽になるのではないか。
だが、免許を取得した自分が彩葉に色々連れて行くようにせがまれ、足にされるのが容易に想像ができたので、蒼空はそれを想像して苦笑いした。
「あら? 蒼空じゃない」
突然声をかけられ、声のした方を振り向くと、肩まで伸ばした艶のある黒髪をなびかせた顔の整った美女――幼馴染の
彼女はグレーのセーターの上に黒いモッズコートを羽織っており、藍色のジーンズといったような服装だった。
「あっ、藍森さん」
「あんた、こんなところで何してんの?」
「見ての通り買い物帰りだよ」
蒼空は苦笑しながら、買い物袋を抱えた両手を上げて見せる。
しかし、筋力の無い蒼空では数センチ上げるのが限界で、紐の腕への食い込みは悪化し、重さと締め付けのダブルコンボで腕は悲鳴を上げていた。
「それ、だいぶ重そうじゃない。あんたのほっそい腕折れるんじゃないの? 片方持ってあげるから、どっちか一方渡しなさい」
見かねた彩乃は手を差し出す。
「いや、申し訳ないからいいよ…………そんなに重くないし大丈夫」
実際はかなり重いので手伝ってもらいたいのは山々だったが、わざわざ彩乃をこんなことに付き合わせるのが、蒼空にとってはとても申し訳なかった。
「アンタ相変わらず嘘が下手ね。ほら、貸しなさい」
彩乃は蒼空の左手から強引に買い物袋を奪い去った。
そして、なし崩し的に彩乃と一緒に家路へつくこととなった。
「アンタはすぐ自分1人で抱え込もうとするんだから……アンタは人を頼るってことをそろそろ覚えなきゃダメよ? 分かった?」
「肝に銘じておきます…………」
彩乃の説教は昔から始まるととても長い。
なので、ここは素直に頷くことにした。
「何、その目は?」
こちらの考えていることを読み取ったのか、彩乃は不服そうな顔でこちらを見てくる。
「イエ、ナニモ」
彩乃は蒼空をジト目で睨んできたので思わず蒼空は視線を外した。
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