第68話

「私、どうしちゃったんですか」


「覚えていないのか」


「はい」


この時、祐志さんは起点を利かせて、本当のことは伏せた。


「まゆは買い物に行って、途中でめまいを起こしたんだ」


「めまい?」


「もう、大丈夫だ」


「ごめんなさい」


「どこも痛いところはないか」


「大丈夫です」


この病院には工藤さんも入院していた。


私は解離性健忘になっていた。


つまり、工藤さんのことは覚えていない状態だった。


「しばらく入院した方がいい、ここは俺の病院だから安心しろ」


「はい」


「また、様子を見にくる」


祐志さんは病室を後にした。


私は病室から出て、売店に向かっていた。

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