第43話

彼は私の手を掴んで、引き寄せた。


「おい、誤解だ、落ち着け、まだ抱いてねえよ、安心しろ」


どうしたの?


なんでこんなにぎゅっと私を抱きしめるの。


「ひでえ顔、涙でぐちゃぐちゃだぞ」


彼は私の涙を拭ってくれた。


「外科医とはじめてだったのか」


私は素直に頷いた。


「へえ、そうか、外科医のところに帰りてえか」


私は俯いて答えなかった。


「喧嘩でもしたのか」


「違います、私、これ以上祐志さんの側にいると、迷惑かけちゃうから、

祐志さんの元を出てきたんです、もう帰れない」


「じゃあ、ここにいろよ」


「えっ、身体で返せってことですか」


「ちげえよ、借金は俺が払う、だからお前は俺の女になれ」


「俺の女?」


「毎晩抱いてやる」


「いやです」

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