第五章 若頭 工藤飛鳥
第37話
その頃、私はあてもなく途方に暮れた。
なんでこんなことになっちゃったの?
三十六年間、お兄様とお父様に守られて、過ごしてきた。
優しいお兄様は仕事で渡米して、帰ってきたら別人だった。
薬のためだけれど、私に対する義理の関係に不満を抱いていたのだろう。
義兄に犯されるなんて、想像出来ないことだった。
それによってお父様の会社は倒産した。
お父様も別人のようになった。
お金をむしる鬼のようだった。
私は祐志さんと知り合って、はじめてを経験した。
恋人の振りを頼んだのに、私を愛しているとプロポーズをしてくれた。
こんな私を受け入れようとしてくれるなんて、信じられない。
祐志さんの優しさに甘えてはいけない。
一人でたくましく生きていかなくちゃ。
そんな時、追い討ちをかけるように私に悲劇が襲いかかった。
いきなり、黒のワゴン車が私の横に停まり、私はあっという間に車に押し込まれた。
口にハンカチを当てられ、意識が遠のいた。
何が起きたの。
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