第35話

「潤のやつ、薬なんぞに手を出しよって、しかもお前を犯そうとするなんて困ったやつだ」


「お父様、どういうことですか」


まゆはその部分の記憶がない。


「お前もお前だ、潤がお前を抱きたいと言うなら、減るもんでもあるまいに、ちょっと相手をしてやればよかったんだ」


「お父様、何を言っているんですか」


「覚えておらんのか」


まゆは驚いた表情を見せた。


「潤はお前が好きだったんだ、日本に帰ってきて、お前が祐志くんと結婚すると聞いて、ショックだったんだろう、お前を抱きたかったんだよ、お前達は血の繋がりはないんだ、

お前だって潤が好きだったではないか、後もうちょっとで、お前を抱けたのにと悔しがっていたよ」


まゆの手は小刻みに震えた。


「でも、お前が祐志くんと結婚してくれたら、私も金に困らない、老後の面倒は祐志くんに見てもらうとしよう、頼んだぞ」


親父さんはマンションを後にした。


私は愕然とした。


お兄様は薬をやって逮捕されただけじゃなかった。


私を犯そうとした、違う、私はお兄様に犯されてしまったんだ。


時々、夢にうなされる。


祐志さんは前みたいに私を抱きしめない。

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