第34話

「俺はまゆを好きになった、ずっと一緒にいたい、まゆだって俺と一緒にいたいって思ってくれたんだろう」


「でも、お父様やお兄様のことを考えると、私だけ幸せになるなんて出来ません」


まゆは涙を流して俯いた。


「そんなことはないよ、親父さんだってまゆの幸せは願ってるさ」


ところが、まゆはこの後、親父さんに悩まされることになろうとは思いもしなかった。


俺の長期休暇が終わり、まゆは昼間は買い物に出かけたり、明るさを取り戻していた。


そんなある日、親父さんがまゆを訪ねてきた。


「まゆ、開けてくれ」


「お父様、すぐに開けます」


まゆは父親のすっかりやつれた姿に愕然とした。


「お父様、大丈夫ですか」


「もう、私はダメだ、あいつを養子にしたばかりに、こんなことになるなんて」


「お父様」


「まゆ、お金を貸してくれないか」


まゆは財布からお金を取り出し、父親に渡した。


「ありがとう、祐志くんは大切にしてくれるか」


「はい」


「そうか、それはよかった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る