第32話

「そうですか、よかった、祐志さんがいないと寂しいですから」


「可愛いこと言うとまゆを抱きたくなる」


まゆはニッコリ微笑んで恥ずかしがっていた。


これでいいんだ。


俺はまゆを生涯守っていくと決めたんだからな。


まゆをしばらく一人にしておけないと考えた俺は、長期休暇を取った。


「まゆ、俺は長期休暇を取った、働き詰めだったからな」


「ずっと一緒にいられるんですか」


「ああ、ずっと一緒だ、毎晩お前を抱ける」


「もう、祐志さんったら……」


まゆは恥ずかしがってモジモジしていた。


俺はまゆを引き寄せ抱きしめた。


その瞬間「いや、離して、助けて」と叫び、部屋の隅に身体を丸めた。


記憶がないが、反射的に身体が拒否反応を示したんだろう。


まゆは顔を覆って、泣き始めた。


俺は距離を保ったまま「まゆ、大丈夫だよ、何にも心配はいらない」と


言葉をかけて、まゆを落ち着かせた。


しばらくはまゆを抱きしめることは控えた方が良さそうだと自分に言い聞かせた。

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