第31話

幻覚が出てきて、ひどい症状だった。


日本にいた時は、優しい、自分の立場をわきまえていた男性だったが、薬で精神が壊れていったのである。


薬物で義兄は逮捕された。


まゆの親父さんは相当のショックを受けて、義兄を戸籍から抜いた。


まゆはしばらく、目覚めることはなかった。


もうすこし、早くやつのことがわかっていれば、まゆを守ってやることが出来たのにと後悔した。


まゆはしばらくして目を覚ました。


「まゆ、大丈夫か」


「祐志さん、私、どうしちゃったんですか」


「怪我をして入院してるんだ」


「怪我?」


「大したことはない、早くマンションに帰ろう」


「はい、あのう、祐志さんが夜勤の日、実家に戻るのはいつでしたか?」


この時、まゆは事件の記憶を無くしていた。


人間は防衛本能が働いて、自分自身を守ると聞いたことがある。


俺にとって好都合だった。


「あ、それは無くなったよ、夜勤はしばらくないから安心しろ」

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