第54話

「あいつの側にいるのは、相当大変なんじゃないか」


私はなんて答えていいかわからず俯いた。


「もし良かったら話してみろよ」


私は廉に彼の事を話し始めた。


「バツイチ子持ちのカリスマ美容師」


「子供いるのか?」


「しかも血の繋がりがないの」


「はぁ?」


「それで彼はあと余命一年」


「余命一年?」


誰だって驚くよね、私が一番驚いているんだから・・・


「凛、マジに目を覚ませ、お前何考えてる」


「だって好きになっちゃったんだもん、もう戻れないよ」


廉はふ〜っと息を吐き言葉を発した。


「凛、あいつの側にいても一年しかいられない、そのあと子供は凛が見るのか?」


「うん」


「十年前から全然変わってないな、どうしていつも凛は考えないで行動しちゃうんだよ」


「ひどい、ちゃんと考えてるもん」


廉は首を横に振り否定した。


「今あいつにふられたんだから、ちょうどいい、ここにいろ」


現実を突きつけられて何も言い返せなかった。

ふられた、そうだ、私ふられたんだ。


「アパートに帰る、あっ、もう解約しちゃったんだ」


「まったく、いいからここにいろ、行くところないんだろう」


私はやっぱりここには居ては駄目と思い、廉のマンションを出る事にした。


「廉、ごめんなさい、私、ここにはいられない、色々ありがとうね」


そして廉のマンションを後にした。

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