第51話

彼はまだ仕事から戻っておらず、私はマンションの外で彼の帰りを待った。


その時黒の高級車がマンションに横付けされた。

車から降りて来たのは玉森廉だった。


「廉、どうしたの?」


「それはこっちのセリフ、中に入らないのか」


私はちょっと困った表情を見せた。


「どうかしたのか」


「鍵なくて入れないの」


廉は不思議そうな表情で問いかけた。


「鍵忘れたのか」


「そうじゃなくて、まだ合鍵彼から貰ってなくて・・・」


「そうなんだ、車乗れよ、ここに止めとけば帰ってくるのがわかるだろ」


私はちょっと戸惑った、廉の車に乗るのはまずいんじゃないかと・・・

彼は助手席のドアを開けて、エスコートしてくれた。


「ありがとう、じゃあお言葉に甘えて」


そして車に乗り彼の帰りを待った。


「凛、俺達やり直さないか」


廉の言葉に動揺してしまった。


「何言ってるの、私達十年前に終わってるでしょ」


「俺は後悔している、あの時なんで凛を手放したんだって」


「しょうがないよ、廉には婚約者が居たんだし、なんで結婚しなかったの?」


「凛を忘れる事が出来なかった」


「今更そんな事言われても遅いよ」


「今なら、俺のやる事に口を挟む奴はいない、だから結婚しよう、凛」


廉は私の腕を引き寄せ、抱きしめた。

その時私の視界に入って来たのは颯だった。

私は颯の姿を見つけ、車から降りた。

彼は目を逸らし、マンションへ入っていった。

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