第16話

火曜日、私は一睡も出来ずに朝を迎えた。

ドキドキする、また、キスされたら、まさかね、彼がいるって言ったんだから大丈夫だよね。

でも、ちょっと期待している自分がいる事に気づいた。


店に到着した。

また営業している様子が無い、火曜日は美容院休みなんだ、とんとご無沙汰の私は全く気づかなかった。


「いらっしゃい」


彼が出迎えてくれた。


「よろしくお願いします」


「ここに座って」


「無料だと気合入らないですね」


ちょっと憎まれ口を言って見た。


「いや、凛だから気合入りまくりだよ」


なんて返せばいいか戸惑った。


「結婚するの?」


「えっ?」


「彼と」


あ~、そうだ、私、彼がいる事になってるんだっけ。

まさかそんな質問くるとは想定外だった、答え用意してないよ~。


「え〜っと、します」


「プロポーズされたの?」


「あのう、その話はもう終わりにしましょう」


「なんで、聞きたいな」


私はこれ以上突っ込まれるとボロが出ちゃうと思った。


「まだですけど、でも結婚します」


「そうなんだ、さて、カラー始めようか」


「はい」


私は良かったと胸を撫でおろした。


「この色がいいと思うんだけど、ちょっと暗めだけどピンク入ってるから地味にはならないよ」


「お任せします」


そして染まる間、彼は席を外した。

しばらくして染まり具合を確認すると、


「じゃあ、シャンプー台に移ってくれる?」


えっ?シャンプー台?どうしよう。

私はシャンプー台に移り、どうか、何も起こりませんようにと祈った。

そして、背もたれが倒され彼の顔が急接近した。


「今日は目を閉じないの?」


「だって大和さんキスするから」


「もしかして期待してる?」


「してません」


次の瞬間、彼の顔が近づいてきた、私は反射的に目を閉じてしまった。

彼の唇が私の唇に触れた、そして彼の舌が入り込んできた、嘘!

呼吸出来ない、彼の手が腰に回された、嫌じゃないから抵抗出来ない。

また、彼のキスを受け入れてしまった。

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