第13話

「ちょっと、凛、その人すごい美容師さんよ」


「そう」


「もしかして、それだけじゃないわね」


ギクッ、もうどうしよう。


「この美容師さん二十九歳よ、何があったの?」


「これから先、私の専属の美容師になりたいって言われた」


「専属?」


「だから料金高いし、払えないからって断ったよ」


「それで」


もう菜々美はすべてをわかっているかの様に私を見つめた。


「そしたら、デートしてくれたらその回数だけカット・カラーを無料にしてくれるって」


「デート代は凛が払うの?」


「大和さんが払ってくれるって」


「それで」


「昨日、ドライブに誘われて行って来た」


菜々美は大きなため息をついた。


「その分今度カラーをやって貰えるって事?」


「そう」


菜々美は暫く考え込んでいた。


「その美容師さんにとって、メリットないわよね、デート代払ってカット代無料で、何が目的なのかなあ」


「結婚したいって」


「結婚、誰と?」


「私と」


「え~え~、プロポーズされたの?」


「その、はっきりと言われたわけじゃなくて」


「えっ、じゃあ、スマホ届けて、ドライブ誘われて、プロポーズされたって事」


「スマホ届けた時にキスされて、食事に行こうって誘われたの」


「いきなりキス許しちゃったの?まっ、あれだけのイケメンだからわからなくもないけど」


「だっていきなり・・・」


菜々美は私の話を遮り続けた。


「キスのあと食事に誘われて、なんでドライブに変わったの?」


「その日の店が終わる時間に待ち合わせだったんだけど、からかわれてるって思って行かなかったの」


「それで」

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