第3話

「待って」


彼は私の後を追って来た。

裏路地に入り込み、そして腕を掴まれ引き寄せられた。


「何なんですか?」


私は彼の腕の中にすっぽり入り抱きしめられた。


「八時に店終わるから、食事しよう、スマホのお礼に・・・」


「離してください」


私は彼から急いで離れた。


「お礼は結構です、失礼します」


彼は私の前に回り込んで近づいてきた。

私は後退りすると、壁に背中を付けた状態になり身動き出来なかった。


「全然名前負けしてないよ、凛、すごく可愛い、マジで」


心臓の鼓動がドクンドクンと早くなった。

彼の顔が急接近して、唇を塞がれた。

キスは初めてじゃないけど、久しぶりでドキドキした。

唇が離れて見つめ合った。


「俺、大和 颯、よろしく」


「店長!ご予約のお客様です、何処ですか」


「やべえ、戻るな、八時にここに来てくれ、あっそうだ、スマホ出して」


私はまだぼーっとしたまま、言われるがままにスマホを取り出した。


「はい、連絡先交換完了」


彼は店に戻った。

えっ、こんな場所で、なんかよくわからないうちに、しかも私をどう思ってるかわからないのに、キスを受け入れて、どうしよう。


あ〜っ、自己嫌悪。

もう帰ろう、時間は戻せないから・・・

忘れる、忘れる、そう、これは事故よ。

でもドキドキが止まらない。

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