第5話

一瞬、嫌な光景が脳裏を掠めた。


私はアルバイトの帰り道、男性に腕を掴まれ、路地に連れ込まれた。


襲われそうになり、意識を失った、それから覚えていない。


この男性が助けてくれたの?


私を助けてくれて殴られたの?


「あのう、その怪我、私のせいですよね」


「いや、むしゃくしゃしてたから、一発殴りたかった、ちょうど相手のパンチをくらっちまったってとこだな」


「でも、ありがとうございました、助けて頂けなかった私は今頃……」


手が震えて涙が溢れてきた。


「送ってやるから早く支度しろ」


「はい」


私はベッドから立ち上がろうとしてバランスを崩した。


その男性の腕に支えられる格好になった。


「大丈夫か」


「すみません、大丈夫です」


とは言うものの全く足に力が入らなかった。


すると男性は私をひょいと抱き上げた。


「きゃっ」

男性と私の顔が急接近した。


「そんな可愛い顔してるから襲われるんだろ」


私は何も言えなかった。

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