第六章 皮肉な運命

第43話

「俺は諦めない、ニューヨークでの亜紀の言葉を信じてる」


私は振り向きもせず走り出した。


ニューヨークでの熱い抱擁、私だって理樹さんの言葉は信じている。


でも、あなたは東條財閥の御曹司、私はあなたの側にはいられない。


なんて皮肉な巡り合わせなの?


ニューヨークで愛した理樹さんが父の会社を倒産に追いやった人の息子さんだなんて。


私達は巡り会ってはいけない運命だったのに。


俺は、会社のため、社員のために諦めなくてはと、亜紀への思いを封印したはずだったが、健と亜紀が一緒に暮らしていると言う現実を見せつけられて、俺のハートは燃え上がった。


絶対に亜紀を渡したくない。


健を好きだと言った亜紀の言葉が脳裏から離れない。


絶対本音であるはずがないと自分に言い聞かせて亜紀を奪い返すと心に誓った。


そんな俺に健はいつものように説教を始めた。


「理樹、何を考えているんだ、お前には婚約者がいるんだぞ、この会社と社員を守って行く責任があるんだぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る