第44話

「そんなことはわかってる、でも亜紀のことは諦められない」


「亜紀は僕の事を好きだと言ってくれた、聞こえなかったのか、お前を信じられないとも言っていたんだ」


「だからだよ、お前と一緒に暮らしているなんて我慢ならない」


「僕も亜紀を愛している、祝福してくれてもいいと思うけどな」


「冗談じゃない、俺は諦めない」


俺はその場を離れた。


私はマンションに戻ると、とんでもない事を口にしたと反省した。


どうしよう。


「健さんが好きです、理樹さんは信用出来ません」なんて言ってしまった。


健さんにどんな顔して会えばいいの?


部屋の中をうろうろしていると、ガチャっとドアが開く音がした。


ドアの方に視線を移すと、健さんが立っていた。


「亜紀、ただいま、仕事が終わったから急いで帰って来たよ」


「健さん」


「亜紀」


健さんは両手を広げて、私に近づいて来た。


私は「ごめんなさい」と言いながら後退りした。


「何がごめんなさいなの?」


「えっと……」


「僕を好きって嘘?」

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